ファンタスティック映画主婦

専業主婦の専業主婦による専業主婦のためにはならない映画ブログ。考察などとは無縁の感想文は基本ネタバレ。独断と偏見による☆採点 満点は★5

ザ・ヴォイドーー阿鼻叫喚と魑魅魍魎のワンダーランド★★★☆(3.8)

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あらすじ

 深夜、森のふもとで行き倒れていた男を病院へ運んだ保安官のダニエル。しかし、病院を取り囲むように白装束の集団が現れ、ダニエルも襲撃を受ける。すると、突如謎のクリーチャーが出現し、病院内はパニックに…。混乱と恐怖の中、ダニエルが病院の地下で見たものとは?

 

 

 

 随分前から話題になっていた、カナダ発のプラクティカル・エフェクト・ゴア映画(なんだそれ?)『ザ・ヴォイド』を「未体験ゾーンの映画たち」で観てきました!

 本作は、Twitterでフォローさせている方や映画ブロガーさんたちが軒並み大絶賛していて、すごく気になっていたんですよね〜。なるほど、これはかなりの怪作でした。観に行けてよかった!

 事前情報をほとんど入れず、クリーチャーとカルト集団が出てくるってことくらいしか知らずに観たんだけど、これがまたいい感じに意味不明な話でね(笑)。いや、だってもう「クリーチャーとカルト」って時点ですでに設定を盛りに盛ってる感じだし、黒魔術とマッドサイエンスのコンビネーションなハイパーでコスモな謎理論が展開していくので、途中から理解するのを放棄しました…。考えるな!感じろ!映画ですねこれは。

 でも、ものすごい大風呂敷なんだけど、畳まれてみると、案外着地はミニマムでパーソナルなところに落ち着きますのでね、ご安心ください(?)。

 

 映像については、所々編集ミスかと思うようなジャンプカットがあったり、照明が暗すぎるように感じるシーンもありますが、イマジネーションと驚きに溢れる映像はおどろおどろしくも美しく、予告編にあった「神々しいまでの地獄絵図」という文言がぴったりでした。主人公が時折見るビジョン(幻覚?)や、どこからともなくわらわらと現れる白装束軍団、終盤の赤い発煙筒に照らされたクリーチャー祭りなどは絵葉書にでもしたいくらいに強い絵力がありました。

f:id:minmin70:20180115094150j:image白装束のカルト集団(モチーフはKKKでしょうかね)がパトランプにチカチカ照らされるシーンはグッときた!

 

 また、でかいディスプレイのデスクトップや病院の備品などの小道具がレトロ感を醸し出し、白熱灯のような色調と往年のホラーを彷彿とさせる音楽が古き良き80年代テイストを盛り上げます。

 「遊星からの物体X」や「ザ・フライ」辺りを彷彿とさせる、CGではない肉々しいクリーチャー造形は一見の価値あり。人体変異系が好きな人にはおすすめです。

f:id:minmin70:20180115095616p:imageデロデロ系クリーチャーでした。

 

 監督は「アストロン6」の一員であるジェレミー・ギレスピー&スティーブン・コスタンスキ。B級なものばかり作る人たちなのかと思ったら、本作みたいなゴリゴリに真面目な映画も撮るんだなぁとちょっと意外でした。 

ASTRON 6

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 渋谷では今週金曜日までは公開されてるみたいですので、気になる方はチェックしてみて下さい。

ヒューマントラストシネマ渋谷 | テアトルシネマグループ

3月にはDVDがリリースのようです! 

ザ・ヴォイド [DVD]

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 血しぶきやら汁は多めドッキリ演出もあって結構怖かったし(劇場では時折「ヒィ」って声が聞こえてました笑)、最後まで見入ってしまいました。面白かったです!

 謎が謎を呼ぶ展開、敵も味方もわからない状況の中、無事生き残り朝を迎えられるのは一体誰だ?!

 

 

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f:id:minmin70:20180115140233j:imageあと、海外版ポスターがセンス良くてカッチョよいです。「地獄はある、それは更にヤバい」

 

 

 

 

 

以下ネタバレ。

 

 

 

 

 

 

疑心暗鬼と恐怖の密室劇! 

 白装束集団に包囲されるわ、看護師がクリーチャーに変貌するわで恐怖に陥る病院内の面々。

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 保安官ダニエル、病院の女医でダニエルの元妻アリソン、医師のリチャード、インターンのキム、患者の妊婦マギーとその祖父。

 そこへダニエルが運び入れたヤク中の男を追って銃を持った親子が乱入。悶着の末、リチャード先生が刺されて死亡してしまいます。

 再び現れたクリーチャーにより州警察官も死亡。外部との連絡手段も絶たれ、残された人たちはピンチとパニックに陥る。

f:id:minmin70:20180115112258p:imageなんか訳知り顔?と思ったらあっさり殺られた州警察。なんだったんだあの思わせぶりな態度は…

 

  銃を持った親子はヤク中の男に家族を殺されその復讐にきたというが、ダニエルら他の人間たちにも殺意をむき出しに。異常な状況から逃げ出すために、ダニエルは二人になんとか協力してもらおうと説得します。

f:id:minmin70:20180115111943p:image左が好戦的な親子。映画序盤から女性を焼き殺すなど、かなりの傍若無人振りを披露。

 ところが、そんな状況でいきなり産気づくマギー。アリソンは帝王切開のために道具が必要だと薬品室へ向かい、何者かに襲われます。

 ダニエルはアリソン救出のため、親子を伴い病院内を捜索。すると驚愕の事実が!

 なんと、死んだと思ったリチャード先生の死体が消えており、ヤク中の男の話によるとカルトの首謀者はリチャード先生で、クスリを使って人をクリーチャーに変える謎の儀式を行っていたというのだ。

 

 ダニエルはリチャード先生とアリソンを探して地下の霊安室へ。そこで彼らが見たものは!! 

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f:id:minmin70:20180115113108p:image!!

f:id:minmin70:20180115113129p:image!?

f:id:minmin70:20180115113138p:imageう、産まれるうぅ!!

 

 …超展開に次ぐ超展開について行くのがやっとでした(笑)。  

 前半は、「外へ出られない」+「クリーチャーに襲われるかもしれない」+「誰を信用したらいいかわからない」という焦燥感と疑心暗鬼の恐怖ダブルコンボで引っ張り、後半は、意外な黒幕に科学と魔術の融合のような地獄絵図で、もうノックアウトです。お手上げです。

 とにかく終盤の阿鼻叫喚祭りには両手を挙げて万歳状態。見せ方も良くて、クリーチャーが頭をシャクシャク杭に打ち付けている→すでに頭にはすっかり穴が開いている!とか、布に隠れたクリーチャーがゆっくり立ち上がる→アクロバティックブリッジのまま襲ってくる!とか、もう面白怖くて「やめてやめてぇ〜(意味:やめないでぇ〜)」って感じ。

 

  「最近火事があったばかりだから病院は移転作業中で、医師も患者も少ない」という設定が人数減らしの口実であるとともに、「実は火事は地下で飼っていたクリーチャー(元人間)が死にたいがために放火したものだった=クリーチャーは死にたくても死ねない」て理由付けにもなってたし、今にも崩れ落ちそうな地下の様子が、おどろおどろしい舞台装置としてもうまく機能してましたね。

 妊婦マギーの子どもの父親は誰?というみんなの疑問にもきれいな形で答えてくれたのも良かった(勘の良い人ならわかるかもしれないけど)。

f:id:minmin70:20180116135518p:imageマギー役の女優さん、狂気な演技もかわいくて良かった!

 

 

子を失った親の後悔と贖罪   

 本作、実は子殺しの贖罪の物語だったのではないかとわたしは思ったのですよ。 

 ダニエルは、アリソンとの間に死産になった子どもがいました。ダニエルはリチャード先生から「本当は子どもが死んでほっとしたのだろう?」と言われても否定できないんです。そして多分、そのことを彼は負い目に感じていたのではないかと。ダニエルはもしかしたら赤ん坊が死んだのは「精神的に父親になりきれない」自分のせいだと思っていたのかもしれない。彼がなぜか度々ヴォイド(=あの世のような虚無空間)とリンクしていたのはその後悔があったからではないかと、わたしは思ったんですよね。

f:id:minmin70:20180116131857j:image「子どもが欲しい」という願いを逆手に取られリチャード先生にクリーチャーの母体にされてしまったアリソン(触手はへその緒モチーフでしょうね)…ダニエルは泣く泣く彼女を手にかけるのでした。 

 

 そして、リチャード先生も愛娘を失った過去があったのでした。その失意から「娘を取り戻す」ための禁断の研究にのめり込んで行ったのです(言及はされませんでしたが、もしかしたらリチャード先生は娘と性的な関係にあったのかもしれません)。

 マギーの体内から産まれたグロテスクなクリーチャーを、我が子と呼ぶリチャード先生の姿はもはや人間ではなくなっていました。

f:id:minmin70:20180115120212p:imageヴォイド(=あの世のような場所?)への扉を開けるリチャード先生。完全に骨格まで違うがな。

 

 ダニエルは、全てを終わらせるためリチャード先生を道連れに入り口の向こう側へ飛び込み、扉を閉じます。それがわたしには自分の子への贖罪のように感じました。

 ダニエルは暗い荒野のような世界でアリソンと再会し、二人は頭上に浮かぶ黒いピラミッド(あれがもしかしたらヴォイド=宇宙空洞の本体なのかも?)を見上げながら手を握り合います。二人は永遠にこの場所から出ることはできない。子を失った(殺してしまった)後悔と贖罪を抱えたまま、生き続けなければならない。それはクリーチャーになるよりも、もしかしたらよっぽど辛いことなのかもしれません。

 

 

生き残った二人

 ヴォイドへの扉が閉まり、娘クリーチャーから逃れることができた銃撃親子の子の方と、白装束集団の襲撃を逃れたインターンのキムは互いに抱き合い生還を喜びます。病院の外は何事もなかったかのように朝が訪れていました…。

 前述の通り、白装束がKKKなのだとしたら、アジア人のキムが生き残ったことに何かメッセージがあるのではないかと深読みをしたくなるところです。

f:id:minmin70:20180116133508p:image初登場時は性格の悪そうな感じのキムでしたが、最後まで生き残る。

 また、もう一人の生存者の青年は、声帯を切られて話ができないというキャラクターです。彼はクリーチャーから逃れるために父親を犠牲にするのですが、彼には父殺しのモチーフを象徴させているのかもしれません。

 

 …と、まぁいろいろ謎の多い内容ではありますが、クリーチャーのルックは観て損はないし、暗喩やモチーフが散りばめられたストーリーは考察したい人にうってつけでしたよ。おすすめです。

 

ジェレミー・ギレスピー&スティーブン・コスタンスキ監督・脚本作。かなりのぶっ飛び具合に笑いが止まらない。こちらも地獄がどうとかって話なので、この手のネタが好きなのかも?