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ファンタスティック映画主婦

専業主婦の専業主婦による専業主婦のためにはならない映画ブログ。考察などとは無縁の感想文は基本ネタバレ。独断と偏見による☆評価 満点は★5 (2017年4月「苺チョコレートをまるかじり」よりタイトル変更しました )

君が生きた証--それでも君は僕の息子★★★★☆(4.7)

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Rudderless
2014年/アメリカ/105分
 

監督: ウィリアム・H・メイシー(初監督作品 主な出演作「ファーゴ」「マグノリア」など。)

脚本: ケイシー・トゥエンター/ ジェフ・ロビンソン

音楽: ソリッドステート/ イーフ・バーズレイ

出演: ビリー・クラダップ/ アントン・イェルチン/ フェリシティ・ハフマン/ セレーナ・ゴメス/ ローレンス・フィッシュバーン/ ウィリアム・H・メイシー

 

あらすじ
やり手の広告マン、サムはある日大学生の息子を銃乱射事件で失う。事件から2年後、会社をやめ酒浸りとなったサムは、塗装工の仕事をしながら湖のヨットで隠れるように暮らしていた。そんな彼の前に元妻が息子の遺品を持って現れる。その中には息子の自作の曲が録音されたCDが入っていた。それを聞いたサムは、遺品のギターを手に、ライブバーの飛び込みステージに立つ。その曲に惚れ込んだ青年クエンティンは渋るサムを説き伏せ、共にバンドを結成する。彼らのバンド「ラダーレス」は瞬く間に町の人気者となって行く。しかしサムはバンドの楽曲が実は死んだ息子の作曲であることをメンバーには言えずにいた…。
 
 

パンフレット:600円 (薄いけど、監督のインタビューとコラムなど、必要なものは入ってる感じ。劇中歌のセットリストがあったりしたらなおよかったのになぁ…)


観賞日 2015年7月1日
 


『君が生きた証』予告編 - YouTube

 
 
映画の日、用があって地方に赴いた際に観賞。
上映前、6人しかいない観客を前に、映画館の女の子がカンペをがん見しながら映画の説明をしてくれて。その一生懸命さと、愛される映画館であろうとする謙虚な心づもりに、温かい気持ちがわきあがりました。
地方の二番館や名画座って、こういう手づくり感がいいよね。
 
さて、作品の話。
とにかく、演奏シーンが楽しい!
実際に演者の方が演奏しているのですが、実に素晴らしい。曲も素敵です。
バンドを組んでいる、または組んでいたことのある人、バンド演奏に憧れのある人、バンドのライブを観るのが好きな人は、かなりはまる映画だと思います。
10代の頃、バンドをやっていたわたしには見事にどんぴしゃりでございました。

とは言え、ただの音楽映画、バンド映画とあなどるなかれ。一般的なそれらのものとは明らかに趣きが違います。
 
 
 
 
 
 
ネタバレあります。ご注意ください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
最初はね、死んだ息子の曲でオヤジが青春をやり直す!みたいな話なのかと思ったの。
あぁ、息子の遺志はおれが引き継いだぜ!系かな?
おや、音楽は息子の死を受け入れるセラピーなんだ的な?
待て、なんかおかしいな…。
 
ていうかどれも全然違った!
 
最初に盛大にネタバレしてしまうと、実はサムの息子は銃乱射事件の被害者ではなく、加害者だったんです。
だからこそサムは、これは息子の曲だと誰にも言えないんですね。
 
確かに、事件後マスコミがやたら追いかけてきたり、会社の同僚に、休みたくない、働きたいんだ!って訴えたのに辞めちゃってたり、違和感はあった。
仕事したいって言いながら酒浸りになっちゃったのかな…てその時は思ったけど、殺人犯の父親を雇い続ける訳にはいかないよね。広告会社だし。
 
一番違和感を感じたのは、遺品の件。
元妻が道端に置く→父、息子の遺品を捨てようとする!
おいおい、ちょっとさすがにそれは酷いだろうと。息子があまりにかわいそうだろと思ったのよ。
息子の死を乗り越えられなくて、手元に置いておくと色々思い出しちゃうとつらいのかなぁ、なんて好意的にとろうと思ったけど、そうじゃなかった。
「殺人犯である息子」の遺品だったから…そう考えると、サムの行動も納得できます。
 
息子のお墓に書かれた「人殺し」の落書きによって、やっと息子の正体が明かされるのですが、それでもわたしは、あれ?なんで?え?って一瞬理解できなかった。
 
サムもおそらく、ずっと息子のことを理解できず、受け入れられずにいたのだと思います。
そこへ息子の心の声が詰まった自作CDですよ。サムは貪るようにそれを聞きまくります。自分も、誰も、知らなかった息子がそこにいる。
「家に帰りたいけど、前世のように遠い」
「僕が何をしても友達でいてくれる?」
魂の叫びのような(そして不思議と現在のサムの心情を代弁するかのような)歌詞と楽曲のクオリティの高さも相まって、サムは息子の音楽に飲めり込んでいく。
 
そんなサムの前に現れる、息子と同年代の若者クエンティン。純朴そうでシャイ(そして多分童貞)、けれど音楽には強いこだわりを持つ好青年です。
クエンティンを、演じたアントン・イェルチンはロシア生まれの26歳、イライジャ・ウッド系のキラキラお目めな顔立ち。そんな見た目とは裏腹なハスキーボイスと猫背。実際こんなでギター弾いてたら絶対モテるだろ。
 
クエンティンと初めてジャムったサムは、彼に息子の姿を見出した。 重なり合う音と声に、心が躍った。
そう、これこそおれが、求めていたものだ…。息子との心の交流を果たした(と感じた)サムは、若者たちときらめくような時間を過ごします。
 
でも、クエンティンは息子ではないし、本当の息子は銃乱射事件を起こした殺人者。
サムは現実と向き合わざるを得ない。
 
サムは事件後はじめて、現場である大学の図書館を訪れます。
そこに建てられた慰霊碑に、息子の名はありません。
なぜなら息子は、加害者だから…。
 
サムは息子の未完成曲に歌詞をつけ、最後のステージに立ちます。観客に、自分の息子は銃乱射事件の犯人であり、この曲はその息子が作曲したものだと告げて。
「君と一緒に歌えたらいいのに、息子よ、息子よ…」
このラストソングの破壊力は凄まじいです。歌も良いのですが、サム役のクラダップの歌唱力、演技力にほんと鳥肌が立ちます。そして泣きます。
 
最後、歌い手の去ったマイクだけが映し出されて映画は終わります。
もうサムは、息子の歌を歌うことも、ギターを弾くこともないでしょう。
けれどもその心根は、クエンティンが引き継ぎ、新たな音楽を作っていくはずです。
息子を失った父親は、Rudderless(舵のない船)を降り、舵を取る=自ら責任を負う人生を歩みはじめたのでした…。
 
 
 
加害者側に立ったストーリー展開はおそらく、賛否が分かれるとは思います。
それに映画としても、別に死んだ息子を殺人犯にしなくても成り立つ話なんです。
逆に言えば、こういう話にするなら、音楽映画にしなくてもよかった。
けれども、この映画に出てくる音楽の数々は、この前提があってこその楽曲だと思うのです。歌として優れていることは確かですが、この映画のストーリーの中で、映像とともに歌われることで光り輝く類のものだとわたしは感じました。
 
 
 
そんなわけで、観賞中は絶対欲しい!と思ったサントラですが、それよりもDVDを買ったほうがいいか、と思い直しました。歌詞カードが入ってないみたいだし…。
君が生きた証

君が生きた証

 

 

DVDは8月発売。Blu-rayはないのかな?

君が生きた証 [DVD]

君が生きた証 [DVD]

 

 

 
楽器店主役のローレンス・フィッシュバーンがいい味出してました。このおっさんがほんといい人なんだよー。テレ東の2時間ドラマに出てきそうな町の人情おやじです。
 
監督のメイシーもバーのマスターとして出演。さりげなくてさすがのうまさでした。
 
バンド演奏したくなる★★★★★
加害者家族に思いをはせる★★★★
ラングドン教授!★★★★★

総合★★★★☆(4.7)