ファンタスティック映画主婦

専業主婦の専業主婦による専業主婦のためにはならない映画ブログ。考察などとは無縁の感想文は基本ネタバレ。独断と偏見による☆採点 満点は★5

クラウド・アトラスーー善き魂はほうき星とともに★★★★☆(4.8)


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あらすじ

1849年、アダム・ユーイングは病に冒されながらにアメリカ大陸へと航海する船に揺られていた。
1936年、ロバート・フロビジャーは最愛の恋人であるシックススミスに手紙をしたためていた。
1973年、ルイーザ・レイはエレベーターでシックススミス博士に出会った。
2012年、しがない編集者、ティモシー・キャヴェンディッシュは人生最大の危機に瀕していた。
2144年、給仕用クローンのソンミ451は記録係からの質問に答えていた。
2321年、文明崩壊後のハワイ島で、ザックリーは襲撃に遭った妹婿を見殺しにしようとしていた。ーー生きる時代も、年齢も性別も人種も異なる彼らには唯一の共通点があった。それは体に彗星形の痣があるということ…。
新進気鋭の英国人作家ディヴィッド・ミッチェルの同名小説を映画化。
 


映画『クラウド アトラス』長&超 予告編【HD】 2013年3月15日公開 - YouTube

 
 
観賞日  2015年7月17日
 
 
率直な感想。
混乱しました。でも、すごく面白かった!
 
6つの時代、6つの物語を並行しながら進んでいきます。
並行、というかランダムというか。そのつなぎもうまいし、それに6つの物語が本当によくできている。しかもどれも全く違うジャンルという。
海洋冒険譚、古典的ラブロマンス、企業陰謀サスペンス、おじいちゃんコメディ、未来SF、文明滅亡後ディストピアもの、と一粒で六度おいしい状態。
それぞれ独立した一つの映画にしても十分面白そうなのです。おじいちゃん映画好きとしてはジム・ブロードベントが主役のパートをもっと見たかったな。
ハル・ベリーがジャーナリストを演じたパートは、90年代サスペンステイストで、地味だけど良作な「ペリカン文書」とか、「依頼人」(ブラッド・レンフロ‼︎)辺りを思い起こしました。

すでに多くの方がレビューや解説を行っているので、もはやわたしに書くことなんて何もないんですけど。
まぁこちらはただの感想駄文ですのであまり肩肘張らずにつらつら書いてみようと思います。


ネタバレあります。ご注意ください。
そしてかなり長文です。











まず、それぞれのあらすじを。
太字は未来もしくは過去につながる事柄)。

エピローグ
片目を失った老人が昔話を語り始めます。映画の最後にプロローグとしてこの老人の正体が明かされます。

オープニング〜タイトルまで
それぞれの主人公たちが脈略なく支離滅裂に登場し、これが入り組んだ映画だと印象づけます。

①アダム・ユーイング、大航海で大後悔。
ニュージーランド近くの島で奴隷貿易に関する商談を成立させた若き弁護士アダム(ジム・スタージェス)。船に乗ったら、密航者の黒人と相部屋になったり、悪徳医師(トム・ハンクス)に毒を盛られたりして命からがらアメリカへ帰国。アジア顏の愛妻(ぺ・ドゥナ)とともに奴隷解放運動へ身を投じることを義父(ヒューゴ・ウィーヴィング)に宣言する。

②ロバート・フロビジャーの恋文
若き音楽家志望で同性愛者、ロバート(ベン・ウィショー)は曲者しじい大作曲家、ビビアン・エアーズ(ジム・ブロードベント)の写譜者として雇われる。エアーズ邸に住み込みで働くロバートは、エアーズの書斎で欠損のある「アダム・ユーイングの航海日誌」を見つけて読みはじめたりエアーズと共同で曲を作ったり、奥さん(ハル・ベリー)と不倫したり、自分でも作曲したりしたことを恋人シックススミス(ジェームズ・ダーシー)への手紙に書く。作曲も順調に進んでいた矢先、エアーズから、自作の曲クラウド・アトラス六重奏」をよこさなければ同性愛者であることを公表すると脅されたロバートは誤ってエアーズを拳銃で撃ってしまう。曲を完成させたロバートはシックススミスに遺書を残し、拳銃自殺。

③ルイーザ・レイ、アメリカを救う。
女性ジャーナリスト、ルイーザ(ハル・ベリー)は科学者シックススミス博士(ジェームズ・ダーシー)と知り合ったことを機に、新規原発事業に裏があるとにらむ。ルイーザに、「君と前世で会ったことがある」と言った協力者、原発の研究員アイザック(トム・ハンクス)は事故を装って殺され、企業の企み(わざと原発が事故を起こすよう仕向け、石油への依存をますます強化させる)に気付いたルイーザも、殺し屋(ヒューゴ・ウィーヴィング)から命を狙われる。しかしなんとかシックススミス博士の報告書を手に入れ、原発会社社長(ヒュー・グラント)の悪事を公表する。

④キャベンディッシュの大脱走
自費出版社のしがない老編集者のキャベンディッシュ(ジム・ブロードベント)はひょんなことから兄(ヒュー・グラント)から悪徳老人ホームに入居させられてしまう。男のような怪力を持つ看護師ノークス(ヒューゴ・ウィーヴィング)からの「おしおき」に怯える生活に耐えきれなくなった入居者たちと脱走計画を立て、なんとかホーム脱出に成功。その後はかつての恋人(スーザン・サランドン)と幸せに暮らした

⑤クローンソンミ、支配からの卒業。
舞台は未来の韓国、ネオ・ソウル。労働は専ら複製種と呼ばれるクローンが行い、純血種である人間たちがそれを支配していた。カフェで給仕係として働くクローン、ソンミ451(ぺ・ドゥナ)は同僚から「キャベンディッシュの大脱走」の映画のワンシーンを見せてもらう。その行為は重大な規律違反であった。その後、ソンミの前にレジスタンスのチョウ(ジム・スタージェス)が現れ、カフェから救い出される。レジスタンスから世界の真実について(クローンは時期が来ると殺され、クローンの食糧として再利用されること)知らされ、ソンミは憤る。また、チョウにより愛を知ったソンミは、クローンの尊厳を勝ち取るべく、革命のシンボルとして演説を行う。しかし政府軍の反撃に遭い、チョウや仲間を失ってしまう。記録係(ジェームズ・ダーシー)への質問に答えた後、ソンミも処刑されることになるが、彼女は自分の言葉が誰かに届いていると信じていた。

⑥ザックリー、善と悪の狭間で揺れる思い…
南の島に住み、ソンミ様を信仰している部族のザックリー(トム・ハンクス)は森で人喰い族(ヒュー・グラント)の襲撃に遭い、義弟ジム・スタージェス)と甥を失う。彼は自らの心に潜む悪魔、オールド・ジョージー(ヒューゴ・ウェーヴィング)の声に従い、二人を見殺しにしたのだった。ある日、高度な文明を持つプレシエント族のメロニム(ハル・ベリー)が島を訪れ、悪魔の山へのガイドを頼まれる。当初は拒否していたザックリーだったが、姪の命を救ってもらう代わりにガイドを引き受ける。メロニムから、地球は汚染されており、助かるには他の星への移住しかないこと、また、ソンミ様は神ではなく、ソンミ451というクローンのレジスタンスであったことを知らされ、激昂するザックリーだったが、オールド・ジョージーの悪魔の囁きを打ち破り、メロニムを信じることにする。メロニムは山の頂上にある施設から宇宙へ救難信号を送ることに成功する。ザックリーは占い師(スーザン・サランドン)の選言を守らなかったために人喰い族から攻撃されるが、そこへメロニムが現れ、ザックリーを救い出す。ザックリーはメロニムと姪と共に他の星からの救助を待つことにする。

プロローグ
エピローグに登場した老人は、他の星への移住に成功したザックリーであり、彼は孫たちに長い長い物語を聞かせていたのだった。そしてその側にはメロニムが優しく寄り添っていた…。


上記に書いた以外にも過去・未来とのつながりが随所に散りばめられており(②のエアーズが⑤ソンミのカフェの夢を見る、①では黒人奴隷⑤ではクローン奴隷を扱っている、②で作曲された「クラウドアトラス六重奏」を③ルイーザが聞く…etc)、登場人物たちもかなり込み入っています。

ここがすごい!その1
・特殊メイクを駆使した1人複数
6つの物語を主要なキャストが特殊メイク技術を駆使して演じています。人種、性別、年齢問わず。中には悪魔という、もはや人間でさえない役まで(顔が緑色だし 笑)。
エンディングで誰がどの役を演じていたかの種明かし(本当に手品だよ)映像が映し出されるのですが、「えぇっ!あの役あの人だったの⁉︎」という驚きと感嘆の声が出ること間違いなし。
未来SFのパートのハル・ベリー、もはや顔変わってるし(笑)。白人メイクのぺ・ドゥナはちょっと無理があったかなー。
 
でも、よくこの方法思いついたな。そんでもってよく実行できたな、と。映画のテーマである輪廻転生や業(カルマ)を表現するには、これ以上ない演出方法だったと思います。

ここがすごい!その2
・こだわりの映像表現
SFパートはもちろん、さすがは「マトリックス」のウォシャウスキークオリティ(サスペンスパートとおじいちゃんコメディパートは「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァが監督しています)。
他にも、②で主役の二人がお皿を割るシーンがあって、あれなんて、ちょっとなかなか撮れない画じゃないのかなぁ。この映画の中で圧巻の名場面だと思います。
(お岩さんもびっくりの豪快な皿割り)
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あと、物語と物語のつなぎ方が絶妙。
登場人物の台詞や状況がかぶっていたり、同じ小道具が映し出されたり。スムーズかつ、前の物語の行方も気にさせつつ、うまいことつなげてて、これは映画じゃないとやっぱりできないやり方だよなぁと思います。

ちなみに、映画では全ての物語をランダムに進めていきますが、原作小説は上巻は①から⑥を順番に、下巻では逆に⑥から①と物語が進みます。多分そのままの流れでやったらかなり凡庸で退屈な映画になってしまったと思うので、このランダム戦法が功を奏したと思います(原作との相違についてはまた後日描きたいなと思っています)。

ここがすごい!その3
・解釈自由な物語
「彗星形の痣を持つ者がすべて同じ魂の生まれ変わり」とも考えられるし、「彗星形の痣を持つ者は選ばれし導師」といった解釈も考えられそう。
主人公たちはみな、運命に逆らうような大きな試練を与えられています(他と比べると、④のおじいちゃんが超小物になるけど…)。
役者=同じ魂と考えるなら後者の方がしっくりくるよね。例えば、悪徳医師から始まったトム・ハンクスの魂は、生まれ変わるごとに善の心と悪の心を行ったり来たりしながら、少しずつ善へと近づいていく。そのすぐそばには必ず彗星形の痣を持つ者がいる。
最初から善人だったぺ・ドゥナは最後は神のような扱いに。

その反面、悪行=殺人を行い続けたヒュー・グラントは最終的に食人をするまでに堕ちてしまいます。
サスペンスパートで殺し屋を演じたエージェント・スミスこと、ヒューゴ・ウェーヴィングは、最後は実態さえない悪魔の役。
 
善いことをすれば、善い人に生まれ変われるよ、でもその逆も然り。という仏教的輪廻とキリスト教的自己犠牲をポジティブにブレンドした着地なのかな、と勝手な解釈しました。違うかもしれない…。

全てはループの物語だと言っている人もいて(①の医師が食人族の遺跡を発掘=⑥と同じ食人族の可能性、歴史は繰り返すなどのセリフがある…etc)、観た人によっていろいろ解釈できそうです。

知的にも視覚的にも刺激的な映画体験でした!

役者すげえ!特殊メイクすげえ!★★★★★
観た後も余韻に浸りたくなる★★★★
とりあえず自分の痣を確認★★★

原作小説。読み終わったら感想あげようかな。
クラウド・アトラス 上

クラウド・アトラス 上

クラウド・アトラス 下

クラウド・アトラス 下


ディヴィッド・ミッチェルの本邦初訳本。これもなかなかに刺激的な読書体験でした!

ナンバー9ドリーム (新潮クレスト・ブックス)

ナンバー9ドリーム (新潮クレスト・ブックス)