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苺チョコレートをまるかじり

観賞した映画(DVD、TV放送含む)の感想をつらつらと書いていきます。独断と偏見による☆評価 満点は★5

劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンスーー「イモを育て、夢を見る」★★★★☆(4.3)

DVD
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あらすじ
ムーミン谷でのどかな暮らしをしているムーミン一家。成り行きから、南の海へバカンスに出かけます。辿り着いたリビエラには、高級ブティックにゴージャスなホテルなど、ムーミンたちにとっては初めて見るものばかり。
ムーミンパパとフローレンはきらびやかで派手なリビエラの生活の虜になってしまいます。一方、ムーミンママとムーミンは都会の価値観になじめず、ボートで暮らすことに。バラバラになってしまった一家は…。


鑑賞日  2015年9月24日


ムーミン、大好きです。
大人になってから物語のムーミンを読んで、そのあまりの面白さに度肝を抜かれまして。原作に近い(のは最初の方だけなんだけど)、平成のアニメ版DVD-BOXももちろん所有しております。劇場公開時にも映画館へ観に行きましたが、気合い入れてDVDも豪華版買ったさ!声優陣が同じなのも平成ムーミンファンとしては嬉しいところ。ゲスト声優のさまぁ〜ずは、なかなかいい仕事してたと思います。木村さんは…カエラさんは…ええと〜…。

ただ、ムーミンコミックスに関してはあんまり詳しくないです。この映画の原作コミックスはぱらりと立ち読みした程度。印象に残ったのはフローレンが「ビキニ…カジノ…」と狂気じみてつぶやきながらカジノに向かう場面。動きや声のあるアニメではかわいらしく描かれていたけど、白黒のマンガだと完全にギャンブル依存一歩手前に見えたよ(笑)。
消費生活や都会の価値観を毒っぽく皮肉っているのでしょうか。

映画はそんな原作の世界観は引き継ぎつつ、家族の物語部分に重点が置かれていた印象。特に父親と母親の、子への接し方の違いについてはなるほど、と思うところもあったな。

今作はフィンランドで作られた初のムーミン映画(監督はフランス人)。色彩感覚などはやはり日本のアニメとは違い、いかにもヨーロッパの風情。
リビエラの空は青くない。



以下ネタバレ。内容を知っていても問題なく楽しめますが、知らない方が面白いと思いますよ!未見の方はご注意ください。





ムーミン世界のキャラクターは大体がみんな自己中心的なんですね。基本自分のことしか考えてない。それでうまくいくのかって言うと、案外うまくいってる。
「ここではめいめいが好きなように好きなことをしていい」と言うのがママの信条なんで、みんながそれを許容すれば、究極的な自己中心的生活は意外と快適なのかも。
ただそれはムーミン谷という閉じられたコミュニティでの話。都会という社会においてムーミン一家は、ある人には「物珍しい変わり者」として受け入れられ、ある人には「呆れた非常識人」として映る。

わたしはこの映画を観ていて、アフリカ(?だかアマゾンだかどこかの部族)の家族が日本に数日間滞在するっていうテレビの特番を思い出した。
自動販売機や自動改札におっかなびっくり、車や人の多さに辟易しながら、味噌汁や白米におそるおそる口をつける…。
異文化交流と言えば聞こえはいいが、それは価値観の対立、とも言える。

この映画ではもちろん、ムーミン一家(田舎)対リビエラ(都会)であるわけで、それと同時に、ムーミン対フローレン、ムーミンママ対ムーミンパパと言った構図になっている。
あの手の特番でも、大体お母さんと末の息子がもう帰りたいって言って、お父さんと年長の年頃の娘さんが日本になじんでたりするんだよね(笑)。

フローレンがリビエラになじむのは、セレブリティへの憧れがすでにあったから。年頃の女の子らしく、おしゃれにも興味津々で、海岸でビキニまで身に付ける。そんな俗っぽいフローレンに、ムーミンはついていけず、その姿に思わず「何も着てないみたい」とか言っちゃう(笑)。

ムーミンパパの方はと言うと、こちらの方が案外根が深い。
冒険家で小説家(ということになっている)のパパは、そんな経歴にも関わらず、谷では凡庸な扱い。多分、そんな状況にまあまあ納得しながらも、不満も持っていたのだろうと。なにせ「父親の威厳を保つため」島へ移住を決行するような人ですから(『ムーミンパパ海へ行く』)。あー、パパ、面倒くさいです。

たがら自分を奇特な人物としてちやほやしてくれるモンガガ侯爵の対応に気分をよくした。
まぁただ単に貴族振ってみたかったって言うのもあるんだろうけど。
映画の冒頭では「平和に暮らし、イモを育て夢を見る」なんて名言を吐いておきながら、同じ口で「我々はド・ムーミン一家。セレブ中のセレブなんだぞぅ」なんて言うしね。あー、パパ、面倒くさ…。

ママは、息子のムーミンそっちのけで自分のヨタ話ばかり吹聴するパパに辟易します。
パーティ会場でフローレンにフラれ、落ち込むムーミン。ママはそれを見て、パパに「あの子に声をかけて」と言う。それに対しパパは「そっとしておくべきだ」と答える。
そう、ここでは父と母の子育て観の対立を描いてもいるのです。

結局、ママとムーミンはセレブなホテルを出て、ムーミン谷から乗ってきたボートを屋根代わりにしてその下で暮らすことにします。そもそも「チップ」や「有料サービス」などの概念がないママに、リビエラはあまりに居心地が悪い。

さて、そんなバラバラになった家族を元に戻すきっかけとなったのは、意外なことにムーミンでした。
フローレンに色目を使う貴族のクラークに決闘を申し込み、見事(?)勝利します。フローレンはそれを機にムーミンの元へ帰ってきました。パパもそんな息子を褒めます。

そんなわけで、フローレンがカジノで稼いだお金でスィートルームのホテル料金をキャッシュで払い、颯爽とホテルを後にするムーミン一家。セレブ気取りにもう未練はない。その後ろ姿はさながら本物の貴族のよう。

けれども、それで終わらないのがムーミン一家。
一悶着あってなんとパパが警察から追われてしまう(この追跡劇もなかなか楽しい絵面)。汚い言葉虫を町中に撒き散らし、お騒がせな一家はムーミン谷へと帰って行ったのでした…。

この物語は、見知らぬ土地へ「行って、帰ってくる」話。冒険譚との決定的な違いは、行った側が帰って来た時の状況と特に変わっていないというところ。ムーミン一家は、結局のどかで穏やかなムーミン谷の暮らしがやっぱり良い、となり、リビエラ側も騒動を起こされつつも、本質的には変わらない。
要するに、ただの旅行なんです。だから、「楽しいバカンス」なわけだ。
極端なこと言っちゃうと、やっぱり家がいいよね〜ってだけの話です(笑)。


わたし、原作でもアニメでも、フローレン(原作ではスノークのおじょうさん)というキャラクターが嫌いだったんだけど、この映画のフローレンは振り切れていて逆に好感が持てたな。
あと、忘れちゃならないのがリトルミィの存在。時々放つ辛辣な物言いが本質を突いていて、わたしは大好きなキャラクターです。
彼女は原作やアニメではトリックスターのような役割で、物語を引っかき回しますが、映画では割と傍観者のような位置づけです。
とは言え、ボヘミアンに憧れる貴族のモンガガに対して水をぶっかけるところなんかは、実にリトルミィ的でよかったな〜。



フローレンのうざかわいさ★★★
ママ無双★★★☆
総合★★★★☆(4.3)


こちらは日本で作られた劇場版アニメーション。名作!

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