ファンタスティック映画主婦

雑食つまみ食い系映画感想ブログ

花とアリス殺人事件ーー女子中学生だから許される。アニメだから許される。★★★(3.0)

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花とアリス殺人事件

あらすじ

両親の離婚により、有栖川徹子(蒼井優)は神奈川県の田舎に引っ越してきた。転入した石ノ森学園中学校の3年2組では1年前、殺人事件が起きたとの噂があった。しかも、殺されたと目される「ユダ」は、徹子が引っ越してきた家の以前の住人だった。事件の真相を探るべく、当時3年2組の生徒であり、現在は引きこもり中の荒井花(鈴木杏)の家を訪ねる徹子だったが…。

2004年に公開された岩井俊二監督作『花とアリス』の前日譚を描いた、監督初のアニメーション作品。 

 

 
『花とアリス』はラストの蒼井優のバレエしか記憶になく、内容はさっぱり覚えておらず。劇場で観たはずなんだけどね。
そもそもそんなに大ヒット!って感じでもなかった気がするし、なぜに続編?しかも今頃?って正直思いましたが…。
好きな人は多分、熱狂的に好きなんだろうと思います。でもきっと、嫌いな人は大嫌いだよね(わたしは好きですよ)。
 
 
今作はロトスコープという手法を用いて作成したアニメーション。ただ、全編がそうと言うわけではなく、一部3DCGも使われているとのことです。なので全体として、いわゆる普通のアニメとはちょっと違う感じ。アニメらしいデフォルメや、オーバーなアクションがなく、特殊な映像効果なんかもない。
だから自然か、と言われるとむしろ逆で、最初はその不自然さに、ちょっと酔う…。
 
映画始まってすぐの、アリスが2階から転落するシーンなんかは、スローモーション感も相まってなかなかの違和感。思わず巻き戻して観直しちゃったよ。
ただ、違和感を覚えるのも最初だけで、慣れてくるとその浮遊感みたいなものが次第に心地よくなってきます。
バレエ教室でのレッスンのシーンは実写でもアニメでもない、不思議な息づかいが感じられました。
 
インタビューによると岩井監督は、人物の顔に影を付けず、肌色を単色にするようこだわったらしいです。
なるほどたしかに人物は平坦というか、マットな感じがします。のっぺりとした人物描写はリキテックスのような質感。
それに対し背景は、淡く繊細な水彩のようなタッチ。特に花屋敷の造形は素敵でしたね。
その質感の対比がまた面白かったです。
 
話の内容は、あるようでないような…。思わずヲイヲイ、と突っ込みたくなること度々(笑)。
前作『花とアリス』も青春の痛手と友情、と言った話でしたが、今作もそれで説明できてしまいそうな話。青春の痛手というかただの痛い子たちというか…。
「実写でやればよかったのに」などの意見もあるようですが、わたしはむしろ、この作品は実写でやったらものすごくつまらなそうだな、と思いました。アニメだから許されるような描写か多かったんじゃないかな。わたしはアニメでも口あんぐりだったけどね…特に前半…。
 
あーあとね、みんなキミキミ言い過ぎ。娘に君、電話越しに君、君、君…ってそこは名前で呼べ(笑)。
 
 
以下ネタバレを含みます。
鑑賞済み前提で書いております。
 
 
 
 
 

いろいろ気になるけど、これでいいのかも

話はね、微妙についていけないところが多々ありました。本当にねー「何でだよ‼︎」って何回も突っ込んじゃった。
特に前半の、陸奥睦美の件には唖然としました。いやいや、中学生だってそこまでバカじゃないっしょ。幽霊に憑かれてみんなから一目置かれる、というのはまぁ、百歩譲ってありだとしても、悪魔払いに参加するってなんだよ(笑)!
つうか、担任の体たらくさにも辟易。先生、もう少ししっかりしろ。
 
 
あと、まぁこれを言っちゃったらダメなんだろうけど、花は湯田くんのシャツの背中にクマンバチを入れたことで、湯田くん死んじゃったかも?!と思い込んで引きこもるわけだけど、いやいや、そんなんで死ぬわけねーって!小学生でもわかるわ!
でもね、そんな「激しすぎる」思い込みでさえ納得できてしまうのは、彼女たちが女子中学生と言う生き物だから。
 
母親や先生に相談すれば、「湯田は死んでない」ってすぐわかることなのに、それをしない(ていうかできない)。自分たちで解決しようとする。その方法も実に稚拙で遠回り。彼女たちは大人じゃないから、最短で物事を考えられない。大人じゃないけれども、子どもでもないから、あっけらかんともしていられない。いつだって真剣に、深刻だ。
わたしにもそういう時があったはずなのに、忘れてしまったんだなぁ…。
湯田くんと再会した花が、帰りの電車で「今はこの幸せに浸らせて」なんて陶酔しちゃうところとか、思わずふふ…って微笑みながらも、何となく身につまされところもあるって言うね。
 
ラストにはアリスと、引きこもりを脱した花が互いにセーラー服姿を見せ合い「似合わねー」と笑う。こういう関係性、微笑ましくて、嫌いじゃない。
男から見ると、女の友情ってこんな風に見えるのかな。
 
 
平泉成(お父さん役と二役)演じるおじさんとひと時を過ごすことになるシーンとか、トラックを全力で追いかけるシーンとか、物語的には無駄だけど、映画的には無駄じゃない感じは実写っぽかった気がする。アニメ好きな方はどんな印象をこの辺りのシーンにお持ちになったのかしら?
こういう、アニメーションではおそらくないだろうシーンと、前述した陸奥睦美みたいに実写ではあり得ないだろうシーンの絶妙なアンバランスさが、この作品のうりでもあるのだろうなと思います。いい感じの現実感と非現実感。
ある意味とても女子中学生的だと思いました。
 
 

声について 

さて、声に関して、蒼井優はもう言うことなし。
声優では『鉄コン金クリート』のシロ役がものすごいはまりようでびっくりしましたが、今作でも、蒼井優が蒼井優役やっているのに蒼井優に見えないという不思議なことに(笑)。ちゃんとアニメの絵として見えると言うか。すごい女優さんです。
 
 
あと、前作『花とアリス』で、男なのにヒロイン的立場だった郭智博がちょろっと(本当にちょろっと)先生役で出てて嬉しかった。あの頃はドラマやら映画でもちょくちょく見る顔だったのに、最近はぱったりだなぁ、かっこいいのになぁ…。と思ってたら正月の相棒SPに出ていて、先日はMicrosoftのCMもやってましたね。今後も活躍に期待。
 
そういや鈴木杏もかつての輝きはもう失われた気がするよね…。『Returner』の時の杏ちゃんはちょうかわいかった。あの路線のまま行けば、今でも大活躍してたと思うのだけれど。見た目のことではなく、扱いの問題です。いや、多少は見た目のこともあるけれど…(苦笑)。
今作では引きこもりということで、低めの声色がなかなかにきまってたと思います。でも時々フラッシュバックするのが『軽蔑』の濃いメイク姿で、あぁ…ってなった。
 
 
中学生あるある★★★
女子あるある★★★
君君あるある★★★
総合★★★(3.0)
 
 
 
 
鈴木杏ちゃんの転機はこの映画からだったとわたしは思ってる。この辺りから路線がおかしな方向へ(笑)。

 

 

 

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世界観はとても好きな岩井俊二作品。でも話の展開は好きじゃない。

 

 

 

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