ファンタスティック映画主婦

専業主婦の専業主婦による専業主婦のためにはならない映画ブログ。考察などとは無縁の感想文は基本ネタバレ。独断と偏見による☆採点 満点は★5

セッションーーとりあえず、こんな「教師」は死ねばいい。でも映画はすごく面白い!★★★★(4.0)

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あらすじ
名門の音楽学校に入学したアンドリューは偉大なジャズドラマーになることを夢見ていた。そんなアンドリューの前に、学内でも有名な伝説の教師フレッチャーが現れる。彼のバンドのドラマーとしてスカウトされ、歓喜するアンドリューだったが、そこから狂気と地獄の日々が始まった…。





やっとこさ、観ました。
2015年のアカデミー助演男優賞を受賞したこと以外にも、映画界の大御所と音楽界の大御所がやりあったことでも話題となっていましたね。
まぁそんなことはともかく、すごく面白かったです。

以下ネタバレあり。





演奏シーンも迫力満点。アップを多用しつつ、テンポの良い撮り方も、スピード感があってめちゃくちゃかっこよかった。
あと、J・K・シモンズ演じるフレッチャーが部屋に入ってきた時の緊張感ね。半端ない(笑)。革靴のコツンって音だけでびくっ!みたいな。そして誰も顔を上げない(笑)。あの場にいたら、わたしはプレッシャーで絶対吐く。間違いなく吐く。で、「俺様の神聖なスタジオに反吐を吐きやがってクソが!とっとと出て行かねーとケツに焼きめし食らわすぞ!」とか言われて泣きながら出て行く羽目に…って何のハナシ?

でも音楽関係の人にはこういう人って実際多いんですかね?わたしは中学の時吹奏楽部だったのだけれど、時々教えに来てくれる外部の講師が本当にクズみたいな人間でね(笑)。
フレッチャーみたいに罵声まではいかないけど、すげぇネチネチ嫌味を言ってくる奴で。「とりあえずお前死ね」って思いながら練習してました。それももう今はいい思い出ですけど…いや、いい思い出ではないな。
あとは料理関係も、元仏料理人の知り合いの話によるとすごい陰湿だと聞いたことがあります。仏料理の巨匠とかって言われている某氏と働いていたらしいのですが、厨房ではもう王様気取り。罵詈雑言は日常茶飯事、気に入らない奴には平気で蹴り食らわしたり…(怖っ)。
あ、ファミレスのバイトしてた時の店長もそんな感じだったな…あ、そういや親戚のおじさんも似たようなところあるな…あ、小学校の時の担任も…。
まぁ多分、フレッチャーみたいな人ってどこにでもいるってことなんでしょう(笑)。

自分の理屈が絶対正しいと信じていて、その場を支配することに陶酔しきっちゃう人間。そういう人がたまたまなまじ権力を持っちゃうと、その下にいる人たちはとんでもない目に合う。
ただ、こんな「教師」はただのクズです。クソ野郎です。生きる価値なし。
コイツは生徒のことなんて微塵も考えていない。それを本人もよくわかっている。だから簡単に嘘泣きもできるし、血だらけの生徒を突き放すこともできるんです。練習中に親のこと言ってくるとか超やな感じ。お前それはただの悪口だぞ!

野球部のシゴキだったり相撲部屋のかわいがりだったりもそうだけど、狭い空間での主従関係って多分極端な方向に陥りやすいのかもしれない。そこでは誰も逆らえないから。誰も逆らえないって知っているから…。


彼が欲しかったのは善き演奏者ではなくて、自分に従順な善き奴隷。
フレッチャーをいい先生だ!と思ったとしたら、多分その人の教師観は歪んでいます。
もしくはそう思わせちゃうシモンズがすごいのか。そういう意味でも、映画としてはとても面白いのだけれど。


元々は純朴な青年だったアンドリューが徐々にフレッチャー化(笑)して行くところなんかも観ていてつらかった。本人は自覚がないけれど、思考さえもフレッチャーに支配されていて。もしかしたら元々の素地があったのかもしれないけどね。
「早死にしてもいいから名を残す人生にしたい」という価値観をわたしは否定しないのだけれど、それを堂々と家族の前で言っちゃうアンドリューをなんだか哀れだなあと思ってしまった。恋人に「偉大になりたい」とか言っちゃうところとか(笑)。いきなり彼氏がそんなこと言い出したら逆にこっちから無理!ってなるだろ。

でもきっと、そんな真面目すぎるアンドリューだからこそ、あそこまで追い詰められちゃったんだろうね。
とにかく、唯一の癒しはパパ。一緒に映画観てくれる息子を大切に思うパパ。息子の味方であり続けようとするパパ。
でもね、パパじゃ駄目なんだ。アンドリューを真の意味で救えるのは、パパじゃなかった。あーもちろん、元カノのニコルでもない(笑)。


刃向かったアンドリューをある意味「殺そうと」したフレッチャーでしたが、ラストには思わぬ反撃を受けます。
二人の交わした視線の意味をどうとらえるか。
再びアンドリューはフレッチャーのしもべと成り下がってしまったのか、それとも二人は主従をこえた共犯関係となったのか?
そしてアンドリューは、救われたのか?
その答えを知っているのは、きっと彼のドラムセットだけ。



確かに、「音楽(だけに限らないある種の芸術)ってこうだよね!」と思う人と、「いやいや、こんなの音楽じゃないだろ」と思う人両方いるだろうと感じました。それは経験者であっても意見が分かれるところだろうと思います。
でも、わたしの印象としては、この映画は「音楽」をモチーフにしているだけであってテーマはそこじゃないよな、と。

ラストのアンドリューの演奏にカタルシスを感じるのは、この映画が「音楽の高みを目指す二人」の話ではなく、「追い込む人間と追い込まれる人間の攻防」の話だから。
アンドリューのドラムは、殺人鬼に追い詰められた女子高生がかます、会心の一撃とおそらく同義。
…えっと、おそらく違う(笑)。


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