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ファンタスティック映画主婦

専業主婦の専業主婦による専業主婦のためにはならない映画ブログ。考察などとは無縁の感想文は基本ネタバレ。独断と偏見による☆評価 満点は★5 (2017年4月「苺チョコレートをまるかじり」よりタイトル変更しました )

【読書】パンドラの少女ーー夏公開映画の原作。少女ゾンビは世界を救う?(ネタバレあり)

 

The Girl with All the Gifts

The Girl with All the Gifts

 
パンドラの少女

パンドラの少女

 

 

 

あらすじ

  謎の奇病が蔓延し、人類の大半が凶暴な「ハングリーズ(飢えた奴ら)」と化した。それから30年後、ウィルスに感染していながらも思考力を持ち続けている子どもたちが、イングランドの片田舎に設けられた軍事施設に収容されていた。彼らを研究することでワクチンの精製や治療法を確立するのが目的だ。中でも一際賢いメラニーは、最良の実験体だった。しかし、ある日その収容施設が「バンカーズ(廃品漁り)」と呼ばれるならず者たちの襲撃を受ける。

 命からがら逃げ出したメラニーと4人の人間たちは、暫定政府のあるビーコンへ向け、ハングリーズの跋扈する荒廃した町を歩み出した…。

 

 

 

主な登場人物

  • ラニ   白い肌に金髪碧眼の少女。「ハングリーズ」でありながら高い知能を持つ。名前は「黒い肌」の意だが、自分には「パンドラ」の名の方が合っていると思っている。ミス・ジャスティノー(と彼女の授業)が大好き。

映画では新人のセニア・ナニュアが演じます。あえて黒人の子にしたのは「メラニー」って名前に寄せて来たのかな?

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  • ヘレン・ジャスティノー   施設の教師。メラニーらに対し愛情を持って接する。しかし過去に子どもを轢き逃げしたことがある。そのため、もう二度と子どもを見殺しにはしないと誓っている。
  • パークス軍曹(エディ)  施設で「ハングリーズ」の監理を統括している。顔に深い傷がある。
  • キャロライン・コールドウェル  治療に執念を燃やす科学者。メラニーを「実験体一号」と呼び、治療法確立には彼女の解剖が第一と考えている。すでに何人ものハングリーズの子どもを生体解剖している。知性派で理論的な考えの持ち主だが、研究に関することとなると全く周りが見えなくなる。5人のうちで最大のトラブルメーカー。

映画では『101』のグレン・クローズが演じます。なんか強そうだな。

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  • キーラン・ギャラガ一等兵   パークスの部下。赤毛の青年。ビーコンに家族がいるが、酒浸りの父親の元には帰りたくないと思っている。

登場人物はほぼこの5人です。

 

  • ハングリーズ(飢えた奴ら)  奇病に冒され人間を襲うようになった動く屍(ゾンビ)。その正体は人間の神経組織に寄生する突然変異のキノコである。唾液と血液を介し感染する。寄生された人間は思考力を奪われ、操られるがままタンパク質補給のために肉=人間を捕食する。身体能力に優れており、捕食対象を認めると猛然と向かってくる。しかし何の刺激もない場合は基本的にぼーっとしている。嗅覚が鋭いため、彼らから逃れるには体臭を消す薬品などを体中に塗り込める必要がある。
  • しかし、メラニーらある種の子どものハングリーズは捕食対象がそばにいなくても活発に動き回るなど、普通のハングリーズとは異なる行動を取っていた。軍事施設にいる子どもたちは軍により捕らえられて収容されている。当初は言語を解さず凶暴性も持ち合わせていたものの、教育を施すと人間と意思疎通を図ることができ、知能指数も高いことが判明。彼らには何らかの免疫が備わっているのではないかと考えられていたが…。
  • 廃品漁り(バンカーズ)  生き残った人間ではあるが、暫定政府のあるビーコンではなく外の世界で略奪をしながら生活をしているならず者の集団。ハングリーズをけしかけ襲撃を仕掛けるなど、やり方は非情で横暴。

 

映画は7月1日(土)日本公開が決まっています。


近未来で何が起こっているのか!?映画『ディストピア パンドラの少女』特報

 どうやら映画ではゾンビの原因がキノコではないっぽいので、終盤に出てきたビジュアル破壊力が高そうな「頭からキノコを生やしたゾンビ」が登場することはなさそうなのが残念。

 

簡単な感想

「カズオイシグロmeetsウォーキングデッド」という惹句につられて読みました。カズオイシグロてか『わたしを離さないで』ね。確かに最初の方の「何やらおかしい不穏な学校生活」はわたしを離さないでっぽいところもある。けれども物語はその施設を出て、荒廃した町を彷徨うところがメインなので、雰囲気としてはコーマック・マッカーシーの『ザ・ロード』あたりをイメージしながら読んだ(人食のならず者から逃げるってところも似ている)。

 あと、結構本格的に科学していてで 、「ここまでガチガチにやらんでも…」って所もあり、読んでてなんとなく『深海のyrr(イール)』を思い出した(そういやこれの映画化ってどうなったんだろう?ググっても何も出てこなかったぞ…)。

  いろいろと不満(後述します)もあるものの、やはり主人公メラニーのキャラ立ちが抜群で、この子が最終的にどうなるのか気になり最後まで一気に読んでしまった。

 ゾンビに襲われるシーンは緊張感もあり、しっかりとハラハラさせてもらえた。映画の予告編にもあったけど、ゾンビだらけの中を物音立てずに歩くっていうのはなかなかドキドキします。作者の方はアメコミ原作も手掛けたことのある人だそうで、動きのある場面は描写力が高く、人物のアクションが想像しやすかったのも映像化されるに至った理由かもしれないな。

 わたしが特に気に入ったのはメラニーが初めて人間を捕食するシーンで、彼女の恍惚とした表情まで浮かんでくるような生々しさがあった。映像化が楽しみ。あと、地虫を食べるシーンとかも…(こっちは別に映像では見たくないが)。

 

不満点…というか、とにかく大人がみんな身勝手でわがままなので、イライラします(笑)。特にコールドウェルには本当に最後までムカつきっぱなし。「お前今それやる!?」っていう(みんながピンチに陥るのは大体こいつのせい)。みんな好き勝手に動きすぎだよ。もう少し緊張感持てよ…。お行儀がいいのは子どものメラニーだけ。大人ども、見習え!

 また、廃品漁りたちがどう絡んでくるのかと期待していたのだけれど、結局最初の施設襲撃だけだったのも残念。ゾンビを操るという知恵があるくらいだから、彼らには何かしらの大きな目的があるのかとも思ったのに結局ただ食料&物資目当てだったのか、と。最終的に彼ら率いるゾンビとメラニーら子どもゾンビが戦う!みたいな話になるのかと勝手に想像していたのでね…(笑)。

 とにかく最後までゾンビ少女メラニーが健気ないい子でね…人間との関係性が新しいゾンビ像を見せてもらいました。『ワールドウォーZ』や『傲慢と偏見とゾンビ』、最近だと羽田圭介の『コンテクスト・オブ・ザデッド』など、今後も面白いゾンビ小説が出てくることに期待です。

 

 

以下核心的ネタバレ

 ロンドン市内にはゾンビの体を突き破り、胞子嚢を実らせたキノコが多数存在。視界を埋め尽くすほどの菌糸壁までも発見し、いよいよ世界の終末を悟るメラニーたち。

 コールドウェルはメラニーと同様、思考力を持つ子どものハングリーズを生け捕りにし、脳を解剖。彼らが抗体を持っているのではなく、生まれながらにして病原体に感染していた(母体が妊娠中に感染した)ことを突き止める。彼らはキノコと共存していたのだ。それはつまり、現在の人類がこの病原体に対抗できる治療法などはないことを意味していた。

  コールドウェルからその話を聞いたメラニーは、自分と同じ子どものハングリーズが新たな人類となるべきだと考え、菌糸壁を燃やしてキノコの胞子嚢を開放。人類は滅亡した。

 唯一の人類は、メラニーに守られたミス・ジャスティノーだけ。彼女はまだ知性を持たない子どものハングリーズのために授業を始めるのだった…。

 

 …原題の「全ての贈り物を授かった少女」であるメラニーは希望を残して匣を開けたパンドラと同様、あらゆる災厄を開放したということ。彼女にとって贈り物とは病原体であり、知識。彼女がゾンビにならなければ、知識を持たなければ、胞子嚢を開放することはなかった。皮肉なことにそれはまるで神の意思によってパンドラが匣を開けたように、キノコの指令によってメラニーも人類を滅亡させたのかもしれない。