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ファンタスティック映画主婦

専業主婦の専業主婦による専業主婦のためにはならない映画ブログ。考察などとは無縁の感想文は基本ネタバレ。独断と偏見による☆評価 満点は★5 (2017年4月「苺チョコレートをまるかじり」よりタイトル変更しました )

海よりもまだ深くーーアウェー映画?場内はほぼ樹木希林世代だった。★★★☆(3.7)

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あらすじ

15年前に一度文学賞を獲っただけで、以来小説はほとんど書けていない良多(阿部寛)。現在は探偵事務所で「小説の取材」と称して働いている。常に金欠で、家賃はもちろん、元妻・響子(真木よう子)との間の息子・真悟の養育費も支払いが滞っており、姉(小林聡美)にも金を無心して呆れられる始末。良多の母(樹木希林)はそんな息子を案じていたが…。

 

 

 

 

是枝監督の最新作。しかし、毎年のようにコンスタントに撮ってますね。海外じゃ4、5年ぶりの新作!なんて人もざらなのに。園子温といいこの人といい日本の監督はよく働くなぁ〜(そうじゃない人もいるけど)。

近くのシネコンで観たのですが、劇場内は7〜8割がた埋まっており、しかも若い人はほとんどおらず、ほぼ樹木希林世代(おばあちゃん世代)の方ばかりで驚きました。

だもんで、樹木希林が話す度に場内は爆笑。特に小林聡美とのやり取りでは笑いが絶えませんでした。「友達なんかいたって葬式に出る回数増えるだけでしょ」とかね。自虐的おばあちゃんあるある?

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丁々発止の息の合ったやり取り。いかにも母と長女の会話って感じ。顔もなんとなく似ている。

 

あと、ミッキー・カーチスが出てきたらどよめきが起こってましたね。恐るべし、ミッキーの破壊力。

それにしても、映画がはじまってから入ってくる人が思いの外多かったな…これも樹木希林世代の特徴なのか?そこはもう少し余裕を持って入場しようよ(笑)。足元暗いから危ないよー(ヒヤヒヤ)と思って見てました…。

完全にアウェーな気分でしたけどね(笑)、とても楽しく観賞いたしました!

 

 

 

以下ネタバレしつつ、つらつらと感想をば。

 

 

 

 

やっぱり脇が堅い。

いつもの是枝氏らしく、主演の阿部寛真木よう子より、脇の役者がすごくよかったですね。小林聡美は言わずもがな、小澤征悦のあの自然と嫌味な感じとか、育ちが出てて最高だったな(褒めてます)。「尊敬する人、身内じゃだめなんだよなー私立は」とか言う。うるせぇよ(笑)。出演時間短いのにインパクト大。

 

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あと、屈託のない池松壮亮。彼のボソボソ喋る演技は元々苦手だったんだけど、今回はとてもいい感じでした。阿部寛の舎弟のようでいて、実際は面倒をみてあげているっていうね。彼が言う良多への「借り」とは結局なんだったのでしょう?

 

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今回はちょいワリー・フランキーでしたね。そうだよ、わたしが観たいのはこっちのリリーなのさ!

 

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息子役の吉澤太陽くん、どことなく中性的で母性本能くすぐる系。「宝くじ当たったら大きいお家買っておばあちゃんも一緒にみんなで住もう」って言うところでは、おばちゃん、希林より先に泣いちまったぜ…。

 

 

 

めくるめく団地ノスタルジー!!

わたしの実家もね、団地なんですよ。うちはもうちょい規模が大きいのですが、雰囲気はあのまんまで。戸建てにはないあの距離感。まじで実家に帰ってきたのかと思うよ(笑)。

近所で帰ってきた同級生とすれ違うとか、孤独死とか、成人した子どもが未だに実家でニートしてるとか。あるよあるよ、実家帰るとそういう話ばっか聞くんだよな(笑)。

団地って、確かにある一定の世代にとったらかなり郷愁を誘うアイコンなんだよね。そこにはもちろん負の要素も含まれているんだけど、そこを切り離せないもどかしさもありつつ、良いところも悪いところも内包して団地であるという…って書いてて意味わかんなくなってきた…。

まぁ要するに、この映画観て、団地の嫌だったところも思い出しつつ、ノスタルジーに浸っちゃったって話です。

その団地コミュニティ云々も含めて、家族の距離感(物理的精神的)の快不快が映画にも表れていて、舞台を団地にした意図っていうのはこの辺りにあるのではないかなぁと思った次第。

 

とはいえ、この団地パートのリアリズムだけでなく、探偵パートのフィクショナリズムがちゃんとあることで、映画として成り立っているのかなと思います。団地だけだとさすがにつまらんと思う。

 

 

 

別れの予感=死

終盤、唐突にラジオから流れるテレサ・テンの「別れの予感」。ちなみに映画のタイトルである「海よりもまだ深く」はこの歌の歌詞から取られています。

海よりもまだ深く

空よりもまだ青く

あなたをこれ以上愛するなんて

わたしには出来ない

テレサ・テンと言えば「愛人」とか「つぐない」とかいかにも不倫っぽい歌ばかり歌っていて、この「別れの予感」もそんな感じの歌なのだけれど、きっと是枝氏はこれを死にそうな母親が息子を思う歌だと解釈したのんだろうと思うのね。

死にゆく自分は、子どもをこれ以上愛することはできないーっていう。

この歌を聞いた後、樹木希林は自分が死ぬならぽっくり行ってほしいか?寝たきりや病気で弱ってもなかなか死なない方がいいか?と息子にたずねるわけです。息子の答えは「なかなか死なない方」。

なんか、愛を感じたね。

 

 

 

ままならない人生、ままならない自分を受け入れるということ。 

良多は過去に文学賞を獲ったことから逃れられない。周りの人間からも、事あるごとに話題にされる。

しかしそれは15年も前の話。彼にとって過去の栄光は誇りであると同時に呪縛でもある。ある意味そのせいで、良多は自由になれない。もう自分には書けないと気づいているのに、辞めることができない。

それは元妻や息子に対しても同じ。もう未来はないとわかっているのに、追わずにはいられない。「家族がいた」ということが、彼にとっての栄光だから。

尾行調査中の高校生(家庭教師との肉体関係があったっぽい?)に、「あんたみたいな大人には絶対にならない」と言われる良多。隣の町田(池松壮亮)はまだ若いから嘲笑っていられるけど、良多は、「みんながみんな、なりたい大人になれるわけじゃねーんだよ」と珍しく声を荒げてしまう。

すでに、かつてあれほど嫌悪していたはずの父親と同じようにギャンブルにふけり、身内に金の無心をするという、似たような道を辿っている事に気付き、愕然としていた良多にとって、この高校生の言葉は言われたくないことだったのでしょう。なりなくなかった大人に自分がなっていることに、一番苛立っているのは良多自身なのだから。

このね、自分が結局親と同じことをしていると気づいてがっかりするっていうのはね、ほんとよくあると思います。しかも憧れや尊敬しているところではなく、なぜか嫌悪しているはずのところが似てしまう…。血は争えない、なんてことで簡単に片付けられないもどかしさ、悲しさがそこにはある。

 

嵐の中、元妻から「もう前を向かせてよ」とはっきりと言われた良多は、「わかった。…わかってた」とまるで呪文を唱えるように呟く。

これにより、思い描いた立ち位置に自分がいないということに気づいていたのに、ずっとそれを受け入れられずにいた良多は、この言葉で何かを吹っ切る。やっと一歩、踏み出すことができたのだ。

父親と同じ血が流れていても、夢は叶わなくても、それが自分。自分の人生。

すぐに生活が激変することはないかもしれない。でも、ラストシーンの良多の背中は、台風一過の空のように晴れ晴れとしていて、希望の始まりを予感させてくれます。

どんなにままならなくても、自分は自分だと受け入れること。そこからがスタートラインなのかもしれない。

その背中を、自分の親も、子も、きっと見ている。

 

 

最後に、やっぱりハナレグミの主題歌がめちゃくちゃよかったー!しんみりじんわりきます。


ハナレグミ – 深呼吸 【Music Video Short ver.】

 PVは池松壮亮が演じた町田が主役のサイドストーリーとのこと。「借り」についても少し触れられているみたい?

 

 

昨年公開の是枝監督作の感想。わたしは今作の方が好きだったなー。

minmin70.hatenablog.com

 

 

 

 今作とは姉妹編に当たるような映画。こちらは田舎の実家が舞台。出演者だけでなく、蝶の件とか歌謡曲の歌詞がタイトルだとか、いろいろ共通点も多い。

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