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苺チョコレートをまるかじり

観賞した映画(DVD、TV放送含む)の感想をつらつらと書いていきます。独断と偏見による☆評価 満点は★5

サンドラの週末ーー自尊心を取り戻す旅★★★☆(3.7)

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あらすじ

病気で休職中のサンドラは、復職を目前に控えたある日、会社から解雇を命じられる。復職したいのなら同僚にボーナスを諦めてもらうしか方法はない、と社長から告げられたサンドラは、週末を利用して同僚たちに「ボーナスより自分を選んで欲しい」と説得して回るのだが…。

 

 

 

『ある子供』などで知られるダルデンヌ兄弟監督作。ストーリーはあらすじの通りで、ドラマチックな何かが起こるわけでもなく、ひたすら一人の女の人が誰かに会いに行って「ボーナスを諦めて!わたしの仕事復帰に賛成して!」って言うだけの話。

いやー、ただそれだけなのにね、ぐっと来たのは何故なんだろう。

主演のサンドラ役のマリオン・コティヤールがとにかく泣くんですよ。すぐ泣く。そしてふてくされてすぐ寝る(笑)。すげーめんどくさいの。

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線が細く、落ちくぼんだ目元がいかにもメンタル弱そうな印象。

 

おそらくうつ病で休職していて、薬が手放せないサンドラ。ちょっとしたことですぐ薬を飲む様子を見ていると、あれ、この人本当に大丈夫?って思うんだけど…不思議とだんだん応援したくなってくるんだよね。その辺りは多分マリオンの魅力なのかも。

月曜日、彼女は同僚の賛同を得て復職することができるのか?そして、彼女の選択は…?

以下、ネタバレを含む感想です。

 

 

 

 

 

 

裕福でもないが底辺でもない人々

サンドラには夫と子どもが2人いて、そこそこの家で暮らしている。夕食にピザを買って食べたり、のんきにアイス買って食べたり、あまり困窮している様子はないのです。子供部屋にもかわいい雑貨があったりして、それなりの生活をしているように見える。サンドラが解雇されても、散財しなければ全然生活できそうなんだよねー。

 

それは同僚も同じで、ボーナスが欲しい理由が「子どもの学費(下宿代込み)」とか「リフォーム費用」とか、やりくりすればなんとかなるんじゃね?な感じの人たちばかりなのです。まぁそこがリアルっちゃリアルなんだけどね。本当に困窮してたら全員ボーナスを選ぶわけだから映画にならないわけで…。

そんなリアルさもあり、自分がサンドラの立場なら?同僚の立場なら?と思わず考えを巡らせてしまいます。

某所のTSUTAYAの店員さんはこのDVDの紹介ポップに、

「こんなひどい会社、俺なら即辞めるけどね」

って書いていて、そりゃーその通りだわと思った(笑)。

 

 

自信と笑顔を取り戻す!

この映画で重要なのは、お金云々よりも多分、サンドラが「体調不良(=うつ病)」で自己肯定感が著しく低いというところなんでしょう。

そんな人が「自分を選んで」って言って回らなきゃいけないんだから、かなりの拷問です。普通の人だってこんなん絶対嫌ですよ。サンドラも当初は「物乞いみたいだ」と言って説得することを嫌がっていたし。

 

ただ、彼女は一人ではない。発破をかけてくれる夫がいるし、同僚の女性ジュリアンは当初からサンドラの味方で、お節介なくらい奔走してくれます。そんな味方に半ばたきつけられ、半ば勇気づけられながら、説得を続けるのです。

同僚たちは様々な事情を抱えていてお金を必要としている。案の定、というか当然、サンドラよりもボーナスを選ぶ、という人がほとんど。けれども、中にはサンドラを支持してくれる人も現れて、彼女はその度に笑顔を取り戻していく。

しかも、移民風の人や有期雇用の人ほどサンドラに理解を示してくれるのね。過去にサンドラに救われたと語る人もいて、それは彼女が元々心優しく、困っている人に手を差し伸べることができる人間だということ。仕事の出来不出来というより、彼女の人間性をみんな評価したわけだよね。鬱上がりの人にとったらこれぼど勇気付けられることはない。

 

たった二人だった味方も少しずつ増え、半数まであと少しというところまでこぎつけたサンドラ。

ただその過程で、同僚が親子喧嘩に発展したり、離婚問題が沸いたりして、サンドラも徐々に追い詰められて行く…。

自分は選ばれるに値する人間なのか?
誰かを不幸にしてまで働く必要があるのか?
葛藤するサンドラは、ついに薬をすべて飲み込んで(つまりは自殺未遂して)しまいます。

 

 

認められて、強くなる

一命を取り留めたサンドラは新たな味方を得て、ついに決戦の投票日を迎えます。結果は…同率。過半数の支持を得られなかったサンドラは解雇されることになってしまいます。それでも、彼女は嬉しかったと思うのね。半分の人間が自分を選んでくれたということは、自信につながったはず。支持者一人一人とハグしてお礼を言って回るサンドラに未練はない。これだけの人が自分を認めてくれたということで、彼女はもう十分なのです。

社長から「有期雇用の契約を打ち切れば、君をまた雇ってもいい」と言われますが、サンドラは迷いなくそれを断ります。映画の最初の方では、社長に一言も返せなかったのに!

キリっと社長を見据えて、「誰かを辞めさせるならお断りします」と颯爽と部屋を出て行く姿はカッコよかったぜ!クソ偉そうな嫌味な主任に「この人でなしが!」と啖呵切ったのもスカッとしたなー(笑)。最初はうじうじ泣いてばかりで、おどおどとしていたサンドラが、ラストには上司に楯突くまでに成長。この2日の間に薬も断ち切り、大きな一歩を踏み出せたのでした。きっと、これだけ強くなったサンドラなら、もう大丈夫だよね。

ある意味、これは一人の女性のうつ克服プログラムなのかも?すんごい荒治療だったけど…。誰かに認められることで、自分も自分を認めることができる。結局のところ、自尊心ってものは、他人によってもたらされるものなのかもしれない。

 

職は失ったけれど、サンドラの顔はとても晴れやか。にこやかに歩き出す彼女の眼前には澄み切った青空が広がっていて、ラストシーンはなんとも清々しい…。

新しい仕事、早く見つかるといいね。

 

 

でもさー、この会社って、コンプライアンス的には大丈夫なんですかね?言っちゃえばコレ、完全にパワハラでしょ。場合によっちゃ弁護士案件だと思うんだけどー…ごにょごにょ。