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苺チョコレートをまるかじり

観賞した映画(DVD、TV放送含む)の感想をつらつらと書いていきます。独断と偏見による☆評価 満点は★5

リップヴァンウィンクルの花嫁ーー結婚式代行、ガチで出席したことあります。★★★(3.0)

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あらすじ

出会い系で知り合った恋人と結婚することになった皆川七海(黒木華)は、結婚式に呼ぶ親戚の少なさを指摘されたために「何でも屋」の安室(綾野剛)に参列者の代行を頼むことにする。しかし、新婚早々夫の浮気疑惑が浮上。七海は安室に浮気調査を依頼するが…。

 

 

 

 

 

「妻がどんどん若返る!?→ドモホルンリンクルの花嫁」でも無ければ、「夫はモンスターハンター!→ヴァン・ヘルシングの花嫁」でも無く、「お前はもう、このライトハンド奏法から逃れられない…。→エディ・ヴァン・ヘイレンの花嫁」でも無いです(不用意なボケ)。

 

2016年3月に公開された岩井俊二監督作です。上映館が少なかったこともあり、公開中には観に行けず…先日レンタルが始まっていたので借りて観ました。

岩井俊二って、わたしには合うところはドンピシャリだけど、合わないところはとことん合わない監督なんですよね。なので、今作はどうなのかなーと…期待と不安でいっぱいでした。

おそらく、今作を好きになれるかどうかの分かれ目は黒木華演じた主人公、「皆川七海」に共感できるかどうかだろうと思います。わたしは…残念ながら、ああいう女は嫌いです(笑)。

ただ、演じた黒木華ちゃんはすごくかわいかったです。出演者は全員、素晴らしかったと思いますよ。綾野剛、今まで一度もいい俳優だと思ったことなかったけど、ちょっとイメージ変わった。あと、驚いたのはCocco

以前観た主演作のあまりのエキセントリックな演技にドン引きしたので、「あれ、意外と普通にできるんじゃん?」と思いました。 

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観終わったあと、すげー疲れました。 


 

ちなみに、わたしの後輩が昔「何でも屋」で働いていて、独身の頃に時々アルバイトを頼まれることがあったんですよね。普段は遺品整理とか掃除とかなんだけど、たまーに今作であったような「結婚式の代理出席」のバイトがあって、実際に一度だけ参加したことがあるんです。

わたしは新婦側の友人として参列したのですが、はっきり言って気まず過ぎて、真白や七海みたいに同席した人と和気あいあいなんて気分にはなれませんでしたよ。そこそこバイト代もらえたし、おいしいもの食べられたし、いい社会勉強にもなりましたけどね。でも、わたしはあんなのもう二度とごめんです…。

 

今作でもう一つびっくりしたのが七海の結婚式。わたしも10回以上結婚式行ってるけど、あんな気持ち悪い結婚式は今まで見たことないぞ!!

新郎友人の余興は寒いけどまぁ100歩譲るとして、花束贈呈前のあの茶番はなんだ?あんな演出本当にあるの?あれはきもい。きもすぎる…。

結婚とか、披露宴に憧れや夢を持っているような人は観ない方がいいです(笑)。

 

 

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

お金は悪いものではない

七海は安室にはめられて新婚早々離婚させられ、半ば騙されるような形でAV女優の真白(Cocco)と暮らすことになります。真白は末期のがん患者であり、「死に際に一人は嫌だ」と自殺の道連れとなる「友達」を探して欲しいと安室に依頼していたのでした。その依頼額はなんと1000万。安室にとってはお金は「報酬」ですが、真白には「自分に幸せを与えてくれたことの対価」なんですね。

彼女は「こんな自分にみんな優しくしてくれる」と言ってしまうような自己評価の著しく低い女性です。宅配便のおじさんが家まで荷物を運んでくれること、レジで店員さんが袋に商品を詰めてくれること…それさえも「幸せだ」と感じているんですね。自分はその「幸せ」の分にお金を払っているんだと、彼女は言います。普通の人にはその考えはちょっと理解できない所もあるし、いくらなんでもその反応は過剰すぎると思わざるを得ない…。

でもね、「お金を払えばお客は神様なんだ」みたいなことを平気で言ってくるような人間が多くなりつつある昨今、わたしは真白のように謙虚に生きることの尊さみたいなものを感じました。「この世界は幸せに溢れている」と真白は言っているのですが、どんなささやかなことにも喜びや悲しみを感じられる感受性を今の人間は失いかけているのかもしれないなぁ…と。

そんな真白にとって、お金は幸せへの対価だから汚いものでも悪いものでもなく、むしろ尊いもの。幸せのバロメーターだから、たくさん使えば使うほど自分が幸せだと言うことなのです。けれどもその生き方は決して幸せそうには見えないというのも皮肉です。

真白の死後、七海は安室から渡されたバイト代を一度は拒否します。七海にとって真白は金銭授受の関係ではなく、ただ純粋な「友達」だったわけですからその反応は当然です。けれど「あなたが稼いだお金です」と諭され、結局そのお金を受け取ります。このお金が「真白の幸せの証拠」だと、七海は感じたからなのでしょうね。

 

 

安室は何者?

今作を観て、多くの人が謎に思うであろう綾野剛演じる安室。全てを知るキーマンであり、物語をかき回すトリックスター的な役柄です。彼はおそらくゲームで言うところのプレイヤー、小説における作家のように、登場人物よりも一段上の、神の目線を持つ者として描かれているように感じました。

ベタ(金魚)の入っているグラスの水をもう片方のグラスに注ぎ入れるシーンは、水=命を分け与えているようにも見えます。まるで消えかかったろうそくの火を継ぎ足す死神のようです。

安室はもしかしたら、結婚式の時の七海の姿を見て、彼女も死に近づいているように見えていたのかもしれない。だから真白の元へ嫁がせた。それとも、そんな七海が真白を救ってくれると考えたのか…どう考えていたのかはわかりませんが、七海と真白の相性の良さを見抜いたのは事実でしょう。

彼は人を動かす仕事を生業としており、誰でも自分の思った通りに動く=コントロールできると思っていたはずです。それこそ神にでもなった気分で(途中、ベビーシッターの仕事なのか、子供用リードで幼児たちを繋げている様子も象徴的です)。けれど彼の目論見は外れ、真白は結局、七海を道連れにしなかった。人の心さえ操っていた(と思い込んでいた)死神は、七海と真白の真実の愛に敗北したように、わたしには思えました。

ラスト、安室は粗大ゴミの回収車で七海の引越し先を訪れており、それを見てわたしはおそらく彼はもう、代理出席業や人を扱う仕事からは足を洗ったんじゃないかなと思ったんですけどね…どうかな。

ただ、「アムロ行きまーす!」は全然面白くなかったです(笑)。あの場面であんなメール来たら、普通は頭に来るわ!

 

 

散りばめられた様々なモチーフ

タイトルの「リップヴァンウィンクル」はアメリカ版浦島太郎とも呼ばれている物語(及びその主人公)のこと。「森に迷い込んだ男が酒盛りして酔いつぶれて寝てしまい、起きたら20年の月日が経っていて世の中がすっかり変わっていた」言うお話です。また、英語で「時代遅れの人」と言う意味で使われる言葉でもあります。日本でも「浦島太郎になった気分」なんて使いますよね。

劇中では真白がSNSのハンドルネームとして使用しており、彼女が世の中から取り残されていると感じていたことが伺えます。

真白が住んでいた洋館は物語のウィンクルが迷い込んだ森と同様、「時間の歪んだ異世界」であったとも捉えることができますね。そもそも最初に七海が洋館に訪れた時、霧が立ちこめているのも重要な暗示に見えます。
霧というモチーフは、「この世とあの世」や「異界と現実」の境を表すものでしょう。三途の川には霧が立ち込めていると言う話もありますし(映画でいうとぱっと思いつくのは「ザ・フォッグ」や「ミスト」、「サイレントヒル」…って全部ホラーだな 笑)。霧を通り抜け洋館を訪れたことで、七海は異界に迷い込んだ、と視覚的に見せる効果もあります。
けれど、七海と真白が洋館で過ごしている時には霧は晴れていました。 二人にとって、二人で過ごした時間は非現実的で不思議な時間だったけれど、手応えのある現実だったことの表れなのではないでしょうか。

 

また、タイトルが「恋人」ではなく「花嫁」となっていることにも注目。花嫁になる=結婚って、要するに契約ですよね。つまりお互いの利害やリスク、不自由さを承知することで成立するもの。真白と七海は(そういう認識がなかったとはいえ)、「お金」という対価を介した契約の元にあったと言えるでしょう。

最初の結婚は七海に幸せを与えることはなかったけれど、真白との「結婚」は書類上は成立していないとしても、とても有意義で幸せな時間だったはず。ここからも、前述した「お金」の認識同様、「結婚」というものの尊さと歪さを表しているのかなぁと思ったり…違うかもしれないけどね!

 

こんな風に様々なモチーフが散りばめられ、10人いれば10通りの解釈が出来そうな映画ですので、考察好きな人は、いろいろ考えてもやもや(?)することができるのも、今作の楽しみ方の一つかも知れませんね。

 

 

 

いろいろと腑に落ちないところ(特に七海の性格)もあるにはありますが、メッセージ性の高い岩井俊二監督らしい映画でした!

3時間と長尺で、内容も一筋縄ではいかないお話なので万人におすすめはしませんが、感傷的な気分に浸りたい人、将来について思い悩んでいる人は心が晴れ晴れするかもしれませんよ!

 

 

 

世界観はとても好きな岩井俊二監督の映画。

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逆にわたしにはまっっったく合わなかった映画。

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ファンも多い作品なので「嫌い」と言うのには勇気が要りました…。正直に書いたわたしの感想はこんな感じ。 

リリイ・シュシュのすべてーー酷評案件。閲覧注意。★(1.0) - 苺チョコレートをまるかじり