ファンタスティック映画主婦

専業主婦の専業主婦による専業主婦のためにはならない映画ブログ。考察などとは無縁の感想文は基本ネタバレ。独断と偏見による☆評価 満点は★5

ダンケルクーーそして、戦争は続く。★★★☆(3.2)

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あらすじ

 第二次世界大戦初期。英仏連合軍はドイツ軍の猛攻により、フランス北端に位置するダンケルクに追い詰められていた。陸軍兵士のトミーは市街戦で仲間を失い、撤退作戦が行われている海岸に一人たどり着く。しかし、敵の戦闘機や魚雷の攻撃により、数少ない救助船も撃沈されていく。

 一方、対岸のイギリスでは、兵士救出のために、民間船舶の徴用が行われていた。小型船の船長ドーソンは自身のムーンストーン号でダンケルクへ向けて出港する。また、救出作戦を妨害するドイツ軍機を阻止するため、英空軍パイロットのファリアらはスピットファイアで出撃する…。果たして取り残された兵士たちの運命は? 史上最大の救出作戦がはじまった!

 

 

  

 クリストファー・ノーラン監督の新作ということで、方々から期待の声が高まっていた本作。宣伝もノーラン推し一択。特にノーランファンでもないわたしですが(てか『ダークナイト』も観たの最近だし)、『新感染』に続いて「逃げる映画二本立て」ってことで観てまいりました。

 ただね、観終わったあと、どっちも手に力が入る映画だったんで、アル中の禁断症状みたいに軽く手が震えててびびったわ…(笑)

 

 

「音」に酔いしれる映画 

 さて、本作で特筆すべきはやはり、「音」です。砲撃銃声水しぶき、機銃掃射にプロペラ音。大音量のこれら効果音が否応なしに臨場感を倍増させます。

 そしてハンスジマーによる音楽。これが特定の旋律を持たずひたすら不協和音を奏でているだけのような「音」でして、不快感と不安感この上ない。その音楽に被せてくる時計の針や鼓動の「音」に、常に緊張を強いられている気分になります。

 なので、そういう意味でも、本作は「一見の価値あり」と言うよりは「一聴の価値あり」な映画かな、と思いました。

 

 ただ、これは完全に好みなんでしょうが、わたしとしてはもう少し静寂の時間があっても良いように思いました。わたし自身どちらかというとBGMの少ない映画の方が好きだから、というのもありますが、弛緩があることで緊張も際立つと個人的には思うのです。それから、体質的に(?)緊張を煽られ続けると眠くなる人間でして、途中糸が切れて意識が飛びそうになりました(笑)。そういう人でなければ最後まで没入して集中できるかもしれません。 

 

 また、本作は極端にセリフが少ないです(登場人物の一人はある理由からほとんど言葉を発しない)。ただしそこは、実際の兵士たちも必要最低限の私語しかしなかったでしょうから、リアルだと言えます。状況説明などはほとんどありませんから、事前に「ダンケルクの戦い」「ダイナモ作戦」について多少調べておいた方がいいかもしれません。

ダンケルクの戦い - Wikipedia

ダイナモ作戦 - Wikipedia

 

 本作の特徴としてもう一つ、 3つの場所、3つの視点、3つの時間軸から描かれているということが挙げられます。それぞれの時系列が入り乱れ、兵士が乗った船が沈没する夜と戦闘機が飛ぶ昼の場面が並列で語られるなどしており、ぼんやり観ているとなかなか混乱します。けれども終盤につれてその時系列が収斂し、3つの視点が交錯するシーンに至っては、「おおー」と素直に驚きましたね。監督の目指していたものは十分伝わってきました。

 ただ(文句が多くてすみません)、本作のような実話ベースの作品でそれをドヤ顔でやるのもどうなんだ?と思うところもありまして。と言うのも、これは同監督の『メメント』や『インセプション』のように鑑賞者の混乱を促してサスペンスを維持しなければならないような類の内容ではないからです。

 本作が第二次世界大戦におけるダンケルクでの「ダイナモ作戦」についての映画だと鑑賞者は知っています。取り残された兵士と共に「早く助けにきてくれー!」と彼らに感情移入しながら(もしくは救出する側で「助けなきゃー!」)観るわけです。それだけでもう十分サスペンスフルなのに、余計なことはしなくてもよかったんじゃないかなーと、わたしは思いました。

 おそらく実話である=皆が結末を知っている、ということなので、作り手としては奇をてらったことをしたかったのかもしれませんが…。

 

 最後にもう一つ、主人公トミーを演じたフィオン・ホワイトヘッドくん。

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 本作がメジャーデビューという新人の俳優さんです。セリフもそんなに多くないので演技というより素なんだけど(大抵海に投げ出されてる)、それがよかったよね。彼自身が良いと言うよりは、無名の役者を使うことで、観ている側としては入り込めるというか、兵士たちに親近感を抱きやすい効果があると思いました。

 

と、いろいろ書きましたが、面白いことは間違いないです。戦場感を感じたいなら映画館へGOですぞ。(もしお家で観るなら、なるべく大きい画面で、そしてかなり近づいて、かつヘッドフォンで大音量、がベストかと思います)

 

 

 

 以下ネタバレありー。

 

 

 

 

 

前述の通り、本作は3視点で描かれておりますのでそれに沿ってストーリーを説明します。

 

陸(描かれる時間=1週間)

 ダンケルク海岸に取り残された兵士たち。時に空からの攻撃に怯え、整列し、ただひたすらに救助を待つ。切り札である桟橋が砲撃により崩落し、絶体絶命のピンチに陥る。

【主要人物】

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トミーフィオン・ホワイトヘッド

陸軍兵士。市街戦で一人生き残り、辛くもダンケルク海岸にたどり着く。便意を催し砂浜にしゃがんだ直後、ギブソンと出会う。生きることへの執着が強く、負傷兵を運ぶフリをしてちゃっかり船に乗り込んだり、 別部隊に紛れて乗船したり、なかなか悪知恵も働く(ただし、彼が乗る船はことごとく沈没する)。しかし、船を降ろされそうになったギブソンをかばうなど正義感のある一面も。

 

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ギブソンアナイリン・バーナード

トミーの排便を邪魔したことから行動を共にすることとなる。非常に無口だが、阿吽の呼吸でトミーの危機を救う。実はオランダ人で、イギリス軍の兵士の死体から制服を奪っていたことが中盤で判明。

 

アレックスハリー・スタイルズ

 「高知連隊」 所属の二等兵。乗っていた駆逐艦が砲撃より沈没し海で溺れそうになっていたところをトミーに救われる。

 

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ボルトン海軍中佐ケネス・ブラナー

撤退作戦の指揮を取る。作戦により30万人の兵士が救出された後も「まだフランス軍が残っている」と一人海岸に残り漢気を見せる。

 

*見どころ・・・砂浜にずらら~っと兵士が並んでいる様子は圧巻。CG使ってないってことはエキストラどんだけ雇ったんだよ…。興味深かったのは、戦闘機から攻撃されてみんな伏せるんだけど、攻撃が終わると逃げたり隠れたりせず、また平然と元の位置に戻ってたところ。戦場に行ったらこんなのなれっこなんだろうな…。

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海(描かれる時間=1日)

 母国イギリスではダンケルクに残された兵士を救うため、民間船までも徴用し、一大救出作戦が行われようとしていた。

【主要人物】

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ドーソン(マーク・ライランス)

小型船ムーンライト号の船長。息子ピーターとその友人ジョージと船に乗り込み、兵士の救出へと向かう。途中攻撃を受けたショックでPTSDを発症していた兵士を救うが彼がダンケルクへの航行を拒んだため、ある悲劇が起こる。

「私たちの世代がはじめた戦争で、若者が戦地で犠牲になっている」と語り、ダンケルクへの兵士救出は自分の務めだと考えている。

 

兵士キリアン・マーフィー) 

 海上に取り残されていたところをドーソンの船に救われる。ダンケルクに向かおうとするドーソンらと衝突し、そのはずみでジョージに重傷を負わせてしまう。その反省からか、海で溺れたトミーら兵士の救出を手助けする。

 

 *見どころ・・・ドーソン役のマークライランスの渋みと深み。特にぐっときたのはキリアンが「あの子(ジョージ)は大丈夫か?」って聞いて、本当は死んじゃったのに「大丈夫だ」と答えた息子に静かに頷くシーンと、悪態を吐かれた空軍兵士に「我々は知っている」と声をかけるシーン。演技に重みがある。

 

 

空(描かれる時間=1時間)

 ダンケルクにおける兵士の救出を阻むドイツ軍のメーサーサシュミット。敵機の攻撃を阻止せんと、3機の英空軍戦闘機スピットファイアが出撃する。

【主要人物】

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 ファリアトム・ハーディ

攻撃を受けながらも、敵機を撃墜、燃料が空になるまで救出作戦遂行のために尽力する。最後は燃料切れのためダンケルク海岸に不時着し、愛機スピットファイアを(敵に構造などを知られたりしないように?)燃やして捕虜となる。

 

*見どころ・・・本物の戦闘機を飛ばして撮ったという飛行シーンは必見。そしてとにかく、トムハかっこいい。顔ほとんど隠れて見えないのにかっこいい。てか「トムハが乗ってる飛行機」ってだけでかっこいい。メーサ―シュミットを撃ち落とすシーンは「フォォ~!!!」ってなったよね。 

 

 

でも戦争は終わらない

 本作は救出作戦が成功し、兵士たちの帰還を、まるで勝利したかのように市民たちが出迎える中終わるわけですが、助かったはずのトミーは決して喜んでいるようには見えません。

 確かに、歴史的に見てもこの作戦で兵士たちを失わなかったことは後々の戦局を考えても勝利と言ってもいいかもしれないし、とても意味のあることだと思うのです。が、実は、ここからが本作の恐ろしいところ。

 詳しい方にとっては常識でしょうが、このダンケルクの戦いは1940年、第二次世界大戦初期の頃のお話なんですよ。要するに、戦争が激しくなるのはこれからなんです。今回生き残った兵士たちはどうなるかと言ったら、また戦地に赴くことになるわけです。つまり、助かってよかったね、では終わらないんです。

 戦争はまだはじまったばかり。ラストカットで見せたトミーの表情から、そのやるせなさをうかがい知ることができるのです。

 まるで本当の地獄はここからはじまった、とでも言いたげなラストシーンに、『インターステラー』や『インセプション』のラストシーンでも感じた、ノーラン監督の厭世的なニヒリズムといいますか、性格の悪さ(褒めてます)を見た気がします。

 そもそも戦争映画なのに、戦闘でなしに「撤退」を題材に選んでいる時点でひねくれを感じざるを得ないわけですがね…(笑)。でもきっとそういうところがノーラン好きにはたまらないんでしょう。

 

 というわけで、概ね楽しめましたが多少思うところもあったダンケルク体験でございました。 もし、感想に奥行きがないと感じられた場合はIMAXで観てないせいなのでご了承くださいっ。(と、逃げ道を用意しておく!…ササッ)

 

 

大好きなノーラン作品。この時系列シャフルは斬新だった!

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ドーソンのセリフ「我々世代がはじめた戦争で若者が犠牲になる」で思い出したのがこの映画。やっぱり、戦争、ダメゼッタイ!

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